何でも経験だと思う。

経験して、初めてそれを理解できるのだから、経験が多ければ多い方がいいとね。

わたしの持論を話す上で、震災での経験をなくして語ることはもはや不可能だ。

わたしたち夫婦もそうだが、震災前、震災後と、無意識に分けて考え話す癖がついている。

あれ（震災）を経験したからこそ、時間を遡れば、阪神淡路大震災の被災された方達の苦悩を知り、その経験をわたしたちは生かそうと思った。前を歩くことは、それだけ苦悩は見えず計り知れないだろう。人間の勝手さだよね。自分がこの境遇になって、初めて理解するのだから。

平和であればあるほど、そこへの想像力が試され、自分のすべきことを考えなければならないのだと学んだ。

（311の手記と重複する箇所もあるが、ご了承ください。）

今、冷静になれば、違和感を感じたのなら、いくらでも自分達でメイクすればよかったと思う。叔母たちに何を言われても、自分たちの考えやテリトリーを守る手段はあったとね。ただ、あの時は、あれが最善で、あれしか考えられなかったのだ。生活への立て直しよりも何より、わたしたち夫婦が優先させたのは、娘の心だったから。でもね、所詮他人事。これから311でも触れるが、人は勝手な自分の物差しを持っている。いろんな偏見や差別は凄まじかったよ。

夫と話したのは、想像力の話。いかに自分として捉えられるか。だからと言って、想像できない人を責め立てる氣はサラサラないのだが、そこが311でわたしが手にした最大のギフトだと思う。今までもあった出来事で、出来ていると勘違いしていたなあと、思うのだよ。わたしは何も知らなかった…。

想像力とは、例えば、「欲しいものあったら、遠慮なく言ってね」と「未使用のドライヤー、良かったら使って」これの違いね。前者もありがたいのだ。声をかけてくれたのだからね。後者は、さらに上をいくありがたさなのだ。全て失い、置いてきているわたしたちからすればね。そこまでの想像をお持ちの方なのかなと思ったね。

人に優しくあるとは、お金とは、物とは、豊かさとは。

多くの人が犠牲になられて、そこは良かったとは言えない。今でも胸締め付けられる。だが、あのまま順風満帆でいったなら、どうだろう。わたしは、想像力を鍛えることをしただろうか。直感だけで生きてきたと今、豪語しているわたしは、ひとの痛みを知ることなく、ヘラヘラと生きてやしないか、そう思うのだ。

無いことに、理由をつけるのも己次第。わたしはわたしの生きてきた道に、ちゃんと理由をつけたかったのかもしれない。