311〜Vol.8
ガソリンが心配だったのでエアコンも付けず情報源のラジオは時々にして向かう
(311の朝、夫はなぜか満タンにしていた、導かれたか・・・)
途中のGSで、東電社有車に給油していた
一般の給油は緊急事態中であり、緊急車両のみの為できない
市民がGSスタッフ、東電社員に罵声を浴びせていた
「こいつらに入れて、俺らには入れねーのか!!」
東電には最前線でしっかり戦ってもらわないとならない
だが罵声を浴びせた彼の氣持ちも痛いほどわかる
生きるか
死ぬか
ガソリンの有無は、それの線引きでもあった
放射能とは、目に見えない、匂いもしない、ただ恐怖しかなかった
夫に「(埼玉へ行くことを)よく決断してくれた・・・」と言われた
「○○(娘)は宝物だもん・・・」涙が溢れた
娘を被曝の危険に晒すわけにはいかなかった
ただ・・・皆を置いてきた・・・両親も妹も、幼い姪も・・・心も体も引き裂かれてしまったように感じた
あちこちが痛い
まずは銀行に、預金を下ろしに向かう
避難者だと告げると、普通預金から10万円だけ下ろせた。とりあえず確保
手持ちの現金の少なさが不安だった
高速は閉鎖されている。全部下道を行くしかない。道路もあちこち寸断されていた
海沿いを避け、おそらく初めて通るであろう山道を走る
途中、携帯電話に留守電が残っていたのに氣がついた
友人の訃報
共通の友人が連絡を入れてくれていた。嗚咽混じりの留守電は聞きとりにくく、
だがはっきりと彼女の死を伝えた
何故こんなことになる
夫と二人、声を上げて泣いた
すぐに会いに行けない。事故さえなければ行くことができたのに
最後のお別れが、できなかった
電話を入れるが、また繋がらない
手短に埼玉に向かっていると伝え、どうかあなたも無事でいて、そう留守電に残した
なぜ、こんなことになった
(なぜ)がずっと、頭から消えない
続