311〜Vol.9
茨城に入ったのか、そこがどの辺りなのかは覚えていないが、トイレを借りにコンビニに寄った
相変わらず飲み物などは置いていない。歯ブラシとパンツ、娘にガムを購入。311からコンタクトが外せず目が痛い。保存液は売っているが、眼鏡を自宅に置いてきている。
トイレで311以降初めて手を洗えて娘と二人感動した。「うわー、水が出る」
余震が頻発していたので、海沿いを避け山へ山へと走ったので、どこをどう通ったのかいまだに思い出せない
だが、午前10時頃出発して午後10時頃に埼玉に到着したのだから相当な時間がかかったようだ
埼玉は夫の叔母が嫁いだ先だった。義母の妹の嫁ぎ先。夜遅く着いたのに、叔父が家の外に出て目印となっていてくれた
とりあえず今までの経緯といつまでになるかわからない避難を、お世話になるお願いをしようと夫婦二人頭を下げようとしたが、
「とりあえず、風呂、それからご飯食べて、話はそっからだ」そう言ってくれた
夫と、泣いた
ずっと風呂に入っていなかったし、暖かい風呂がこんなにありがたいものだと思ったことがなかった
娘が一切笑わないのが、氣になる
「今日は遅いし、とにかく寝なさい」
畳の部屋に布団・・・暖かだった
安堵も束の間、これからのことへの不安といまだに福島に残る家族が心配でたまらなかった
どうか、被曝しないでいて・・・
震災がなければ、今日は娘の習い事(和太鼓)のコンサートをする予定だった
ふと、メンバーの無事も氣になった
何もかも置いてきた、置いて、逃げた、眠れない
耳鳴りが続く
安否確認も、怖くて出来ない・・・
町の浜一帯は壊滅的だと、聞こえてきていたから
今晩もまた、眠れない夜だ
続