311〜Vol.10
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必要なものを買いに出る。
夫の従兄弟が連れて行ってくれた。
明るくなって、いろいろ目に入る。
ここは日本、か?…
我々は着のみ着のまま放り出された。
なのに、ここは違う…時の流れが、違う。
店は、確かにペットボトルの水は一人一箱とか制限あるものの、全てが普通なのである。
違和感。
わたしたちだけが取り残された違和感、何とも言えない心細さ、
体が心があるようでない。
喪失感。
(故郷を追われるとは、どうしようもない喪失感なのだな…)
ショッピングモールは人で溢れかえっている。
フードコートに、笑い合う人、人、人。
娘は、笑わない。
わたしがしっかりしないと…。
安くていい、手持ちがあまり無かったので安いものを探す。季節柄、春物ばかりで冬物が手に入らず困った。まだまだ寒かった。
メガネも欲しい。ずっとコンタクトレンズで目が壊れてしまう。替えもない。保存液が買えたので外すことはできたが計画停電で眼鏡屋が再開するのは、もっと先とのこと…。早く欲しい。
娘の学校も心配だった。当時小1。本を一冊買ってやった。
突然何もかも奪われたのは、この子も一緒だ。あの日、耐震構造に問題のあった小学校は幸いにも怪我人は出なかった。これも後から娘自身から聞いたことだが、あの瞬間、家族の死がよぎったらしい。
小学1年生の彼女が、自分を置いて皆いなくなってしまう恐怖が頭をよぎったと言った。
幸い、ここに3人共に在る。
生きている、それだけでありがたかった。
離れたくなかった、これ以上、奪わないで。
続