311〜Vol.4
312
朝、スタッフの女性が娘に「今日はカレーだよ」優しく声をかけてくれた
あと数日でライフラインも整い帰れるだろう、だが前日に雪が降ったことから父と妹夫婦と一緒に毛布を取りに自宅へ戻った
父は薬が欲しかったらしい
その帰り道午前8時頃、町中にサイレンが鳴り響いた
避難しろ???南か西に逃げろ???何が起こっている?
(この時、何による避難なのかは全く知らないし、原発で事故が起きたとは聞かされていない)
一晩中自衛隊のヘリが飛んでいたのはわかっている
それが何を意味していたのか、今ならわかるが、その時は、たくさんのヘリの音、初めて聞く避難指示のサイレンに恐怖しかなかった
慌てて夫の職場に戻ると、大勢の人がパニック状態
何が起きている
既に修羅場だった
小さい子どもにマスクをさせる親(なぜマスク?)
決断を迫られている、どこに、行けと・・・
自治体職員の兄と昨夜から連絡がついていないまま、ここから40キロほど離れた市へ行くことを決めた
兄が心配でたまらないが携帯が繋がらない
妹と2人、顔の知っている兄の同僚に我々は無事だと伝言をした
泣きながら、兄を頼むと
その人も泣いていた
2台に分かれ、離れないよう慎重に車を出した
大混乱の中、道路陥没による国道○号線封鎖
別ルートにて向かう
その途中、町民搬送用のバスに乗っていた兄とすれ違う
車を持たない町民をピストンで避難させていた
・・・生きていた、良かった、父も、泣いた
その間、知人にすれ違ったが、車の渋滞、人の多さ、言葉を交わすことなく、我々はチリジリバラバラにされた
それはまるで空襲警報のように起こり、着のみ着のまま、お金も僅かしか持たず、
ただ、避難しろ
一瞬で故郷を追われた
続